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大阪高等裁判所 昭和50年(ネ)2317号 判決 1976年4月30日

控訴人(原告)

平山ケイコこと

全慶蓮

右訴訟代理人

松井清志

外二名

被訴訟人(被告)

久保合名会社

右代表者

久保章

右訴訟代理人

麻植福雄

主文

1  原判決のうち控訴人の強制執行不許の宣言の請求を棄却した部分を取り消し、本件訴のうち右請求にかかる部分を却下する。

2  訴訟費用は、第一、二審を通じ控訴人の負担とする。

事実

一、左記の各事実は、いずれも当事者間に争を見なかつた。

(一)  被控訴人を原告、控訴人を被告とする大阪地方裁判所昭和四二年(ワ)第三、四二三号建物収去土地明渡請求事件において、昭和四五年九月一八日、控訴人から被控訴人に対し、大阪市西区靱本町三丁目五八番、宅地267.30平方メートルを同地上の建物五棟(いずれも本造トタン葺バラツク平家建)を収去して明け渡し、同地にかかる無権原占有に基く賃料額相当の損害金として昭和四〇年一〇月二五日から昭和四二年五月末日まで月金一一八、四五五円の割合、同年六月一日から昭和四三年九月末日まで月金一三六、七五七円の割合、同年一〇月一日から昭和四四年一〇月末日まで月金一五〇、七八五円の割合、同年一一月一日から右土地明渡に至るまで月金一六八、六二八円の割合による金員を支払うべき旨を命じ、仮執行の宣言を付した第一審判決が言い渡された。

(二)  控訴人は、右判決を不服として大阪高等裁判所に控訴を申し立て、該事件が昭和四五年(ネ)第一、四三六号事件として係属したところ、昭和四七年六月九日同裁判所において大要左記条項を含む訴訟上の和解が成立した。

(1)  控訴人は、被控訴人に対し右土地の無権原占有に基く損害金として前記第一審判決において支払を命ぜられた額の金員を支払う義務があることを認め、これを昭和四九年六月一一日限り支払うこと。

(2)  昭和四九年六月一〇日までに右土地上の各建物からその占有者ら(福井信義ほか一〇名の右訴訟事件の共同控訴人)が退去し、控訴人が右全建物を収去または放棄して同地を明け渡したときは、被控訴人は、控訴人に対して前項の損害金支払債務を免除し、金六五〇、〇〇〇円を支払うこと。

二、原審において、控訴人は、「右和解条項(2)所定の昭和四九年六月一〇日までに前記建物からの退去と土地明渡が完了したから、同条項(1)および前掲第一審仮執行宣言付判決に掲記の損害金支払債務につき免除の効果が発生するとともに、控訴人が被控訴人から和解金六五〇、〇〇〇円の支払を受け得るに至り、また、右第一審判決の執行力は、控訴審での和解成立により消滅した。」と述べ、

1  被控訴人から控訴人に対する大阪地方裁判所昭和四二年(ワ)第三、四二三号建物収去土地明渡請求事件の仮執行宣言付判決に基く損害金の請求(同判決主文第三項)についての強制執行は、これを許さない。

2  被控訴人は、控訴人に対し金六五万円とこれに対する昭和四九年六月一一日から支払済に至るまで年五分の率による金員を支払え。

との判決を求める旨申し立てた。

被控訴人は、請求棄却の判決を求め、「控訴人主張にかかる和解条項所定の期限到来前における建物退去および土地明渡完了の事実は、これを否認する。」と述べた。

原裁判所は、控訴人の請求を棄却する第一審判決を言い渡した。

三、控訴人は、右判決に対して控訴を申し立て、

1  原判決のうち控訴人の強制執行不許の宣言の請求を棄却した部分を取り消す。

2  被控訴人から控訴人に対する大阪地方裁判所昭和四二年(ワ)第三、四二三号建物収去土地明渡請求事件の仮執行宣言付判決に基く損害金の請求(同判決主文第三項)についての強制執行は、これを許さない。

との判決を求め、

被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方は、当審において原審における主張を反覆した。

<証拠略>

理由

控訴人は、本訴において前記建物収去土地明渡請求事件の第一審の仮執行宣言付判決に基く強制執行につき請求に関する異議を主張しているのであるが、前掲当事者間に争のない事実によれば、右第一審判決は、控訴審における訴訟上の和解の成立により失効したと認めざるを得ないから、同判決に基く強制執行にかかる請求異議の訴は、もはやその利益がないものと解される。けだし請求異議の訴は、有効な債務名義の存在を前提としてその執行力の排除を求めることを本来の目的としているからである。

以上の次第で本件の請求異議の訴は、不適法と断ずべきである。かように解しても、前記第一審判決の執行力のある正本に基く強制執行が現実に残存しておれば、控訴人から執行文付与に対する異議の申立をなした上右強制執行の排除を求める途があるから、なんら不合理ではない。そうすると、原判決のうち右請求異議の訴につき本案に立ち入つて審理の上控訴人の強制執行不許の宣言の請求を棄却した部分は、不当であるから、民事訴訟法第三八六条に従いこれを取り消した上、本件訴のうち右請求にかかる部分を却下することとし、なお、訴訟の総費用の負担につき同法第九六条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(朝田孝 戸根住夫 畑郁夫)

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